あかねちゃんはあてもなく歩き続けていました。

酔っぱらい達の騒ぎ声が聞こえるたびに電信柱の影に逃げ込みます。
そんな事を続けているうちにますます自分がどこにいるのかが分からなくなってしまいました。
帰ろうと思ってもどっちに行けばいいのかも判りません。

悲しみに暮れた顔をふと上げると、一人の男の人が目の前を歩いていました。
その後ろ姿に何となく見覚えがあるような、、、もしかしたら空腹から来る錯覚かも知れません。
でも、、とっても懐かしいような、、、
気がつくとあかねちゃんは、その男の人にすがるように、シャツをおそるおそる引っ張っていました。



モジモジと済まなそうに言葉をつまらせている少女を目の前にして、M氏は自分から声をかけました。
「どうしたの?」
そうかけられた声の優しさに、あかねちゃんは思わず涙が出そうになっちゃいます。

思ったとうり、その人はとっても優しそうなそうな声と顔だちをしていました。
先ほどの酔っぱらいたちとはぜんぜん違います。

「あの、、、あかね、、、あかね‥‥」
あかねちゃんは思っている事を上手く言葉に出来ません。
もともと思い付きだけでやろうとした事です、男の人相手にどう言おうかなんて考えていませんでした。

M氏が少し心配そうにあかねちゃんの顔を覗き込みます。
思わずあかねちゃんはドキッとしてしまいます。
人間の目から見れば、人の良さそうなただの青年ですが、
鬼であるあかねちゃんにはそれ以上の2枚目に見えるようです。

「ぁの、、、ぁのぉ、、、、」
「うんうん」
優しいM氏は少女の言葉を待ちました。

「あの、、、そのぉ、、、おにいちゃん‥‥・ あかねと、、、Hな事しませんか?」
あかねちゃんはワンピースの裾をめくりあげながら、やっとの事で言いました。












深夜の牛丼屋のカウンターに並んだ、おかしな組み合わせの2人が食事をしていました。
あかねちゃんとM氏です。

事情を聞いたM氏はまずあかねちゃんの空腹を何とかしてやろうと、ここに来たのです。
あかねちゃんは牛丼というものを初めて食べました。
お腹が空いている事もあるんでしょうが、こんなにおいしいものを食べた事がありませんでした。

「でね、、、あかね達の住んでいるテントも流されそうになっちゃって‥‥」
泣いたカラスが何とやら、さっきまでべそをかいていたあかねちゃんはすっかり元気をとりもどして
こうなったいきさつを牛丼を食べながらM氏に説明していました。

そんなあかねちゃんを微笑ましく眺めているM氏でしたが、、、、
先ほどの言葉と、夜のネオンの中にくっきりと浮かんだあかねちゃんのパンツが脳裏から離れません。
まぁ、所詮こんな子供がそんな事する勇気もないだろうし、、、
家まで送り届けてちょっとお小遣いでもあげればいいか、、、
なんて風に考えていました。

M氏が牛丼の支払いを済ませると、二人はまた夜の街を歩き出しました。

「は〜。おいしかった。 おにいちゃんありがとう」
「いいよいいよ。牛丼くらい」
「それでぇ、、、」
「ん?」
「おにいちゃん、、、あかねと‥‥Hな事してくれませんか?」
思わずM氏がスッコけます。


「ななななな」
たじたじと後ずさりしそうになったM氏にあかねちゃんが詰め寄ります。
「あのぉ、、本当の事を言うと、、、あかね、、お兄ちゃんみたいな人好き、、、だし、、」
ごくりとM氏が生つばを飲み込みます。

「おうちでアオべぇもキすけもアタイの事待っているの、、、お願い」
「だだだだ、、ダメだよ、そんな事。第一日本には買春防止法って法律があって‥‥」
M氏がちょっと説教じみた感じで、その法律の事を説明しました。
それを聞き終えたあかねちゃんはキョトンとしています。

「‥‥分かったけど、、、あかね、鬼だよ。人間じゃないから大丈夫」
その答えに流石のM氏も唖然としています。

「でもするっ、、、たってそんな場所ないからダメだよ。オレのアパートは声が隣に聞こえちゃうし、
 勿論ラブホなんて入ったら通報されちゃうし‥‥」

「あ‥‥それだったら大丈夫☆」
あかねちゃんは少しあたりを見回しました。
丁度繁華街の外れに来ていたので近くに小さな公園があります。
あかねちゃんはM氏の手を取ると、その公園へと入って行きました。

「ぁのねぇ、こんな公園なんて結構人目も多いし、Hな事なんてやってたらすぐに見つかっちゃうよ?」
少し呆れたようなM氏に構わず、あかねちゃんは木々が立ち並んだ小さな林の中であたりを見回しています。
「このへんかな?おにいちゃん、ここに座ってください」
小さな林の中でもとりわけ人目につかなさうな場所に来ると、あかねちゃんはM氏をそこに座らせました。
「のねぇ、、」
あかねちゃんはポケットから小さなお皿を出しました。ワンピースとお揃いのピンク色をしています。
しかたなしに従ったM氏の頭の上に、そのお皿を乗せると、、、
「うっぁっ??」
まるでその皿に吸い込まれるように、M氏の姿が消えました。

あかねちゃんは、お皿を人目がつかない場所に、丁寧に移しかえると、今度は自分から飛び込むような姿勢でお皿の中に消えました。







------ つづく ------


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